私は猫舌である。熱いコーヒーを飲む場合、どうすればより温度が下がるだろうか。
ミルク、砂糖などを先に入れるべき、後に入れるべきか。
結論から言えば、飲む直前に入れる方がより温度が下がる。
理由は気温との温度が大きい方が熱の移動量が大きいためである。
90 ℃から 80℃に下がる時間は、80 ℃から 70℃に下がる時間より短い。
温度が高い最初の方に熱の移動は大きく、低くなるにつれて緩慢になる。
大気への放熱を促進するためには、ミルクを入れるのは後にして初期温度を高く維持した方がよい。
計算してみる。
2つの異なる温度の物体を混合する場合を考える。
1つ目の物体の質量 m1, 比熱 c1, 初期温度 T1、
2つ目の物体の質量 m2, 比熱 c2, 初期温度 T2とする。
混合した後の温度を T とする。
m1 c1 T1 + m2 c2 T2 = ( m1 c1 + m2 c2 ) T
T = ( m1 c1 T1 + m2 c2 T2 ) / ( m1 c1 + m2 c2 )
特に、比熱が等しい ( c1 = c2 ) 場合は、
T = ( m1 T1 + m2 T2 ) / ( m1 + m2 )
質量 m, 比熱 c, 初期温度 T0 の物体を温度 Ta の大気中に置いた場合の、物体の温度 T, 熱量 Q の変化を考える。
ニュートンの冷却の法則より次の微分方程式が成り立つ。ただし、α は比例定数である。
dQ/dt = -α ( T - Ta )
Q と T の間には、次式が成り立つ。
dQ/dt = mc × dT/dt
式を整理すると、
dT/dt = -α/(mc)・( T - Ta )
この微分方程式の解は、次式となる。
T(t) = Ta + ( T0 - Ta ) exp { -α/(mc)・t }
ミルクを最初に入れた場合と、飲む直前に入れた場合の液体の温度を計算する。
大気の温度を Ta とする。コーヒーの質量を M, 初期温度を Th、ミルクの質量を m, 初期温度を大気の温度と等しい Ta とする。
コーヒーもミルクも水の割合がほとんどなので、比熱は等しく c とする。
コーヒーを淹れた時刻を 0, 飲み始める時刻を τ として、τ における温度を求める。
最初にミルクを入れて混ぜた場合、その直後の温度 T(0) は、
T(0) = ( M Th + m Ta ) / ( M + m )
質量は M + m となるので、その後の温度 T(t) は次式となる。
T(t) = Ta + { ( M Th + m Ta ) / ( M + m ) - Ta } exp [ -α/{ (M + m) c }・t ]
時刻 τ における全体の温度 Tfirst-milk は、
Tfirst-milk = T(τ)
= Ta + { ( M Th + m Ta ) / ( M + m ) - Ta } exp [ -α/{ (M + m) c }・τ ]
= Ta + (Th - Ta)・M/(M+m)・exp [ -α/{ (M + m) c }・τ ]
ミルクの飲む直前に入れる場合は、時刻 τ までコーヒー単体が大気で冷却される。その温度 T(t)は、
T(t) = Ta + ( Th - Ta ) exp { -α/(Mc)・t }
コーヒー単体の時刻 τ での温度 T(τ) は、
T(τ) = Ta + ( Th - Ta ) exp { -α/(Mc)・τ }
ミルクと混ぜた時の全体の温度 Tlast-milk は、
Tlast-milk = ( M T(τ) + m Ta ) / ( M + m )
= M / (M + m)・[ Ta + ( Th - Ta ) exp { -α/(Mc)・τ } ] + m / ( M + m )・Ta
= Ta + (Th - Ta)・M/(M+m)・exp { -α/(Mc)・τ }
ミルクを最初に入れた場合の温度 Tfirst-milk と、ミルクを飲む直前に入れた場合の温度 Tlast-milk の式を比べると、expの中身が異なっている。
ミルクを飲む直前に入れた場合の方が、 exp の中身が負で分母が小さいので、より温度が下がることが分かる。