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ホバリングするドローンの仕事率とエネルギー

ドローン (ヘリコプターでもよい) がホバリングするのに必要な仕事率 [W] とエネルギー [J] を計算する。

力学

ドローン全体の質量を M、空気の密度を ρ、ローターの面積を S とする。
ローターが空気から受ける力を F とする。これは逆に空気がローターから受ける力にも等しい。
ホバリングしている時、ドローン全体にかかる重力 Mg と F は釣り合っている。
 F = Mg     式1



ドローンのローターは空気を下に押し下げている。
静止していた空気はローターによって、下方向の速度を与えられる。その速度を v とする。
微小時間 Δt の間にローターの下の空気は vΔt だけ移動する。よって、Δt の間に移動する空気の容積は SvΔt、質量は m = ρSvΔt である。
空気は速度 0 から vに変化したので、運動量の変化と力積の関係は次式となる。
 FΔt = m・v - m・0 = m・v
 FΔt = m・v = ρSvΔt・v
 F = ρSv2     式2

式1と式2から
 ρSv2 = Mg
 v2 = Mg / ρS
 v = {Mg / ρS} 1/2

Δt の間に移動する空気の質量 m は、
 m = ρSvΔt = Δt {MgρS} 1/2

仕事率 P (単位時間当たりのエネルギー) を計算すると、
 P = (1/2)mv2 / Δt = (1/2) {Mg} 3/2 {ρS} -1/2

時間 T だけホバリングした時のエネルギー E は、
 E = P・T = (T/2) {Mg} 3/2 {ρS} -1/2

この式によると、ホバリングに必要なエネルギーはローターの面積 S の平方根に反比例する。
よってドローンのローターが大きい程 小さいエネルギーでホバリングできる。ただし普通はローターを大きくしようとすると質量 M も増加する。
また上記の計算では、ローターの下部の空気の速度分布は下向きに一様と仮定しているが実際には異なる。揚力に寄与しない速度成分もある。

具体的な計算



DJI社のドローン DJI mini 2 (日本版)の場合について、ホバリングに必要な仕事率を計算してみる。
重力加速度 g = 9.8 [m/s2]、空気の密度は ρ = 1.29 [kg/m3]、ドローンの質量 M = 0.200 [kg] である。
ローターは 4個あり、ローターの半径は 6 [cm] なので、面積 S = 4 π (0.06)2 = 4.52 × 10-2 [m2] である。
よって仕事率 P (単位時間当たりのエネルギー) は、
 P = (1/2) {Mg} 3/2 {ρS} -1/2 = (1/2) {0.2 × 9.8} 3/2 {1.29 × 4.52 × 10-2} -1/2 = 5.7 [W]

この値は理論的な値で、実際にはモーターやローターの効率、無線等の補機の消費電力などがあるので、もっと大きくなる。