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配線インピーダンスを考慮して負荷の電圧を最大化する

配線インピーダンスを p+jq 、純抵抗の負荷を R とする。負荷に並列にリアクタンス X を接続する。
負荷にかかる電圧 V が最大となるリアクタンス X を計算してみる。
負荷が消費する電力は V2/R なので、負荷の消費電力が最大となる条件でもある。

一見すると、インピーダンスマッチングの計算 (解は複素共役) に似ているが条件が違う。
配線インピーダンスと負荷は固定で、リアクタンスだけが可変である。
力率など考慮せず、あくまで負荷電圧の最大化のみを目指す。


V = { jRX / (R+jX) } / { p + jq + jRX / (R+jX) } × E
 = R / { R + p + Rq/X + j(q - Rp/X) } × E
|V| = R / √ { (R + p + Rq/X)2 + (q - Rp/X)2 } × |E|

|V| を最大化する X を求める。
α = (R + p + Rq/X)2 + (q - Rp/X)2 と置く。
dα / dX = 0 となる Xmax を計算すると、
Xmax = - (p2 + q2) / q
これが負荷にかかる電圧を最大化するリアクタンスである。配線インピーダンスは誘導性 q > 0 なので、接続する Xmax < 0 は容量性である。
この時の電圧 Vmax は、
Vmax = R / {p2 + q2 + Rp} × √{p2 + q2} × |E|

ちなみに、リアクタンス X を接続しない場合の負荷の電圧 V0 は、
V0 = R / √{(R + p)2 + q2} × |E|

数値計算

配線インピーダンス p + jq = 1 + j2, 負荷 R = 100, 電源電圧 E = 1 で、Xを変数として数値計算しグラフ(X 対 V)を描いてみる。
電圧 V が最大となるリアクタンス Xmaxは、 Xmax = - (p2 + q2) / q = - (12 + 22) / 2 = -2.5 である。
この時の電圧 Vmax は、
Vmax = R / {p2 + q2 + Rp} × √{p2 + q2} × |E| = 100 / {12 + 22 + 100 × 1} × √{12 + 22} × 1 = 2.13


リアクタンスを接続しない時の電圧 V0は、
V0 = R / √{(R + p)2 + q2} × |E| = 100 / √{(100 + 1)2 + 22} × 1 = 0.99
なので、リアクタンスによって約 2倍の電圧が得られる。
ただし、ここには記載していないが電源から流れる電流も大きくなる。実用的ではない。あくまで試みの計算である。