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紙を42回折ると月に届くというが、その時1層当りの分子数はいくつか?

前置き

倍々ゲーム・べき乗の効果を示す有名な話に、「紙を42回折ると月に届く」というものがある。
これは厚さ 0.1 [mm] の紙を 42 回折ると、月までの距離 380,000 km を超えるというものである。
式で表現すると次のようになる。
1.0 × 10-4 × 2 42 = 4.4 × 10 8 [m] = 440,000 [km] > 380,000 [km]

もちろんこれは理論的な話で、実際に折ることは困難である。

1層当りの分子数

42 回折った後、1層当りの面積は元の面積の 1/242 になる。
その場合 1層当りの分子数はどのくらいだろうか。
もし 1 に満たないとしたら、理論的にも実現不可能ということになる。

紙の大きさは A3用紙を考えることにする。A3用紙の 1枚の重さは 8 [g] である。
紙の主成分は、セルロース (C6H10O5)n、分子量は 162 n である。
紙の場合の重合度はざっくり 1000 くらいのオーダーらしいので、n = 1000 とする。
よって、A3用紙 1枚のモル数は次式となる。
8 / (162 × 1000) = 4.9 × 10-5 [mol]

アボガドロ定数 6.02 × 1023 より、A3用紙 1枚当たりの分子数は、
6.02 × 1023 × 8 / (162 × 1000) = 3.0 × 1019 [個]

42 回折った後、1層当りの分子数は、
6.02 × 1023 × 8 / (162 × 1000 × 242) = 6.7 × 106 [個]

よって 1 よりは十分に大きいことが分かった。分子の粒度の小ささは、正に桁違いである。