Top 息を吐くと体重は減るか?

浮力の反作用のゆくえ

物体が水に浮いて静止しているとする。
物体には水から浮力が作用している(上向き)。一方、反作用として物体も水を押している(下向き)。
その力は最終的にどのように底に伝わるのか。

初期状態

断面積 S の容器に水が入っている。重力加速度を g、水の密度を ρ とする。容器の質量は 0とする。
初期状態における底から水面までの高さを h0、全体質量を M (=ρh0S) とする。
初期状態で底にかかる力 F0 は次式となる。
 F0 = Mg =ρh0Sg



物体が浮く場合

初期状態から水に物体を浮かべた。物体の質量を m、物体の水面下にある体積を V1 とする。
物体が水から受ける浮力の大きさは ρgV1 である。自重と釣り合っているので、
 mg = ρgV1
物体が水面下に沈んだ分だけ水面は上昇する。この時の底から水面までの高さ h1 は、
 h1 = h0 + V1 / S

水位が上昇した分だけ底の圧力 p1 も上昇する。
 p1 = ρgh1 = ρg・(h0 + V1 / S)
底全体にかかる力 F1は、
 F1 = p1S = ρgh0S + ρgV1 = (M + m)・g

つまり、浮力の反作用は物体が押しのけたことよって生じた水位の上昇、圧力の上昇によって底に伝わる。
当然ながら、力 F1 は全体の合計質量 M + m に作用する重力と等しい。
大洋に浮かぶ小舟も海水面をわずかに上げて荷重を海底に伝えていると考えると深遠である。

物体が沈む場合

次に物体が沈む場合について考える。
物体が水没している場合でも自重を支えられないだけで浮力は働いている。
物体の質量を m、物体の体積を V2 とする。
物体が水から受ける浮力の大きさは ρgV2 である。沈むので、
 mg > ρgV2
物体は底に接していて、底には重力と浮力の差だけ力 A がかかる。
 A = mg - ρgV2

物体が水没した分だけ水面は上昇する。この時の底から水面までの高さ h2 は、
 h2 = h0 + V2 / S
水位が上昇した分だけ底の圧力 p2 も上昇する。
 p2 = ρgh2 = ρg・(h0 + V2 / S)

底全体にかかる力 F2は、圧力 p2 によるものと物体から直接受ける力 A からなる。
 F2 = p2S + A = (ρgh0S + ρgV2) + (mg - ρgV2) = (M + m)・g

当然ながら、力 F2 は全体の合計質量 M + m に作用する重力と等しい。