わたてんを見ていたら、ひなた達がすごろくを作っていた。それでふと考えた。
すごろくのマス数が分かっている場合、サイコロを平均何回振ればゴールできるのだろうか。
または逆に、ゴールまでにサイコロを振る平均回数をある値にしたい場合、すごろくは何マスにすればよいのだろうか。
ローカルルールがあるかもしれないので、ここで考えるすごろくのルールを明確にしておく。
・進むマス目に他者のコマがあった場合でも、影響はないものとする。
・ゴールするには、ちょうどの目を出さなければならない。ゴールまでのマス数に対して多すぎる目が出た場合は、ゴールから逆方向に超過分だけ戻ることとする。
1番目のルールより、他者の干渉がないので自分の(一人分の)操作だけを計算すればよいことになる。
またルールではないが、計算の都合上 次の仮定を設ける。
・コースはスタートからゴールまで一直線である。分岐やループはない。
・1回休み・ジャンプ(振り出しに戻るなど) はない。
・使用するサイコロは 1個とする。
最初に6マス(ゴールを含まない)しかない短いすごろくについて考える。
マスを、ゴールから近い順に q1, q2, q3, q4, q5, q6 とする。
マス qi から ゴールに到達するまでにサイコロを振る平均回数を xi とする。
例として、q4 にいる場合を考える。
4 がでれば、ゴールである。確率は 1/6 で、ゴールまでの回数は 1 である。
1 がでれば、q3 に移動する。確率は 1/6 で、ゴールまでの平均回数は 1 + x3 である。
2・6 がでれば、q2 に移動する。確率は 2/6 で、ゴールまでの平均回数は 1 + x2 である。
3・5 がでれば、q1 に移動する。確率は 2/6 で、ゴールまでの平均回数は 1 + x1 である。
よって、q4 から ゴールに到達するまでにサイコロを振る回数の期待値 x4 は、次式となる。
x4 = 1・1/6 + (1 + x1)・2/6 + (1 + x2)・2/6 + (1 + x3)・1/6
同様に立式すると、6個の未知数に対して 6個の式ができる。
x1 = 1・1/6 + (1 + x1)・1/6 + (1 + x2)・1/6 + (1 + x3)・1/6 + (1 + x4)・1/6 + (1 + x5)・1/6
x2 = 1・1/6 + (1 + x1)・2/6 + (1 + x2)・1/6 + (1 + x3)・1/6 + (1 + x4)・1/6
x3 = 1・1/6 + (1 + x1)・2/6 + (1 + x2)・2/6 + (1 + x3)・1/6
x4 = 1・1/6 + (1 + x1)・2/6 + (1 + x2)・2/6 + (1 + x3)・1/6
x5 = 1・1/6 + (1 + x1)・2/6 + (1 + x2)・1/6 + (1 + x3)・1/6 + (1 + x4)・1/6
x6 = 1・1/6 + (1 + x1)・1/6 + (1 + x2)・1/6 + (1 + x3)・1/6 + (1 + x4)・1/6 + (1 + x5)・1/6
これを解くのは結構面倒だが(検算は容易)、解くと
x1 = x2 = x3 = x4 = x5 = x6 = 6
となる。つまりどの位置からでも等しく平均 6 回サイコロを振ることになる。
なんとこの短いすごろくの場合は、位置がどこでも優劣はないのである。
一般のもっと長いすごろくでも、終盤で最後の 6マス以内にメンバーが団子になっている場合は同じことがいえる。
同じことを別の視点からも計算することができる。
6マスのすごろくの場合、どの位置でもある値が出ればゴールできる状態になっている(確率 1/6)。
出なければ、引き続きサイコロを振る状態に戻る(確率 5/6)。
つまり下図のような状態になっている。
未ゴールを初期状態として、ゴールに到達するまで回数の期待値 x の式は次のようになる。
x = 1 × (1/6) + 2 × (1/6)・(5/6) + 3 × (1/6)・(5/6)2 + 4 × (1/6)・(5/6)3 + …
この式を、変形や等比級数の和の式を使って解いても x = 6 が得られる。
こちらの方法の方が連立方程式を解くより楽だろう。
次に1マス追加した、7マス(ゴールを含まない)のすごろくでスタートからゴールまでにサイコロを振る回数の期待値 x7 を計算する。
この場合は 1回でゴールする可能性はなく、次のマスは 1/6 の確率で q1 ~ q6 のどれかである。
q1 ~ q6 からゴールに達するまでの回数の期待値は x1 = x2 = x3 = x4 = x5 = x6 = 6 と求まっているので、 x7 は
x7 = (1/6)(1 + x1) + (1/6)(1 + x2) + (1/6)(1 + x3) + (1/6)(1 + x4) + (1/6)(1 + x5) + (1/6)(1 + x6)
= 1 + ( x6 + x5 + x4 + x3 + x2 + x1 ) / 6 = 7
以降同様にして、漸化的に n マスの場合の、サイコロを振る回数の期待値を求めることができる。
xn = 1 + ( xn-1 + xn-2 + xn-3 + xn-4 + xn-5 + xn-6 ) / 6
下の表は、100マスの場合まで計算したゴールまでにサイコロを振る回数の期待値である。
マス数 n が十分に大きい領域では、nが 1増えるごとに、サイコロを振る回数 xn はサイコロの目の期待値の逆数 1/3.5 ずつ増加する。
※注釈 上の議論では、同じ xi という変数を使っているが、xi (i≦6) と xi (i≧6) は変数の意味が異なる。
xi (i≦6) は、6マスのすごろくで位置 qi から開始した時にゴールに達するまでにサイコロを振る回数の期待値だが、
xi (i≧6) は、iマスのすごろくでスタートから開始した時にゴールに達するまでにサイコロを振る回数の期待値である。
x6 は、両方とも包括している。同じ変数を用いたのは、変数を分けると漸化式が 1つで書けないからである。
続・すごろくでサイコロを何回振ればゴールできるか? 分散・標準偏差
サイコロが2個の場合
すごろくのマスの数 n (ゴールを含まない) | ゴールまでにサイコロを振る回数の期待値 xn |
6 | 6 |
7 | 7 |
8 | 7.167 |
9 | 7.361 |
10 | 7.588 |
11 | 7.853 |
12 | 8.161 |
13 | 8.522 |
14 | 8.775 |
15 | 9.043 |
16 | 9.324 |
17 | 9.613 |
18 | 9.906 |
19 | 10.197 |
20 | 10.476 |
21 | 10.76 |
22 | 11.046 |
23 | 11.333 |
24 | 11.62 |
25 | 11.905 |
26 | 12.19 |
27 | 12.476 |
28 | 12.762 |
29 | 13.048 |
30 | 13.333 |
31 | 13.619 |
32 | 13.905 |
33 | 14.19 |
34 | 14.476 |
35 | 14.762 |
36 | 15.048 |
37 | 15.333 |
38 | 15.619 |
39 | 15.905 |
40 | 16.19 |
41 | 16.476 |
42 | 16.762 |
43 | 17.048 |
44 | 17.333 |
45 | 17.619 |
46 | 17.905 |
47 | 18.19 |
48 | 18.476 |
49 | 18.762 |
50 | 19.048 |
51 | 19.333 |
52 | 19.619 |
53 | 19.905 |
54 | 20.19 |
55 | 20.476 |
56 | 20.762 |
57 | 21.048 |
58 | 21.333 |
59 | 21.619 |
60 | 21.905 |
61 | 22.19 |
62 | 22.476 |
63 | 22.762 |
64 | 23.048 |
65 | 23.333 |
66 | 23.619 |
67 | 23.905 |
68 | 24.19 |
69 | 24.476 |
70 | 24.762 |
71 | 25.048 |
72 | 25.333 |
73 | 25.619 |
74 | 25.905 |
75 | 26.19 |
76 | 26.476 |
77 | 26.762 |
78 | 27.048 |
79 | 27.333 |
80 | 27.619 |
81 | 27.905 |
82 | 28.19 |
83 | 28.476 |
84 | 28.762 |
85 | 29.048 |
86 | 29.333 |
87 | 29.619 |
88 | 29.905 |
89 | 30.19 |
90 | 30.476 |
91 | 30.762 |
92 | 31.048 |
93 | 31.333 |
94 | 31.619 |
95 | 31.905 |
96 | 32.19 |
97 | 32.476 |
98 | 32.762 |
99 | 33.048 |
100 | 33.333 |